『言いたいこと・・・って?』
恐る恐る聞くと、美香はあたしを見て
笑った。
「ねぇ、あなた、寺嶋さんにいじめられてた
五十嵐真奈美ちゃんでしょ?」
『え・・・?』
「あなた、随分有名人だったのよ?
ピアノも出来て、あの戸川くんの彼女で・・って」
美香は綺麗な髪の毛を手でくるくるといじりながら、
そう話し始めた。
「だけど、かわいそうな子ね。その戸川くんたちから
いじめられて、まさか殺されちゃうなんて」
『なんでそのこと知って・・・っ!?』
「だから、全部みえてるって言ったじゃない」
『え・・・?』
「あたし、聞いてたのよ。驚いたわ。
自殺だと思ってたのに、まさか同級生に“殺された”なんて」
美香は、いつからあたしに気付いていたんだろう。
どこまで聞いたんだろう。
こんな話をあたしにして、
一体何をしたいんだろう・・・。
色んな疑問が頭を過る。
恐怖を感じていたのはこのことだったのかもしれない・・・。
あたしはじっと、美香を見つめて黙っていた。
「あたしが、みんなにバラしてあげようか?
寺嶋さんたちのしたこと」
『え・・・・!?』
「そうしたら、あなたはいじめられて自殺してしまった
“可哀想な子”じゃなくて、ちゃんとした“被害者”になるのよ?」
何それ・・・。
何でそんなこと・・・。
そんなことしたら奈々たちが・・・っ!!
『やめて。そんなことしたら奈々たちが悪くいわれちゃ・・・』
「いいじゃない。実際悪いことだし。
あなたにとっては、あたしの存在は恨みを晴らすチャンスになる」
『恨みって・・・。あたしはっ』
「庇うことないじゃない。寺嶋さんたちがたたかれるなんて
そんなに酷いものじゃないでしょ。それ以上のことを
あなたはされてるんだから」
『山本さん、お願いだから言わないで!!』
あたしは叫んだ。
思わず叫んでいた。
やめて。
奈々たちを困らせないで。
奈々たちのこれからの未来を奪うようなこと
絶対にしないで・・・。
お願いだから!!
「・・・変な子」
美香はあたしをびっくりしたように見つめて、
訝しげにそう言った。
『・・・お願い・・・』
