その幸せな時間は、
さび付いたドアの擦れる音で崩れた。



「涼介!?何してるの?」



「・・・美香?」



『あ・・・』



出た。

美香だ・・・。



「一人で喋っちゃって、どうしちゃったの?」



「別に。なんでもねぇよ」


美香は宮原くんに近付いて
じっと見つめた。




「ふ~ん。あっそう」


宮原くんを訝しげに見つめる美香に、
あたしは嫌悪感を覚えた。


なんなんだろう。この子。
なんでかわかんないけど、すごく不思議。



この子がいると、すごく怖い。



どうして?


普通の、女の子じゃない。


ただの、宮原くんの幼馴染じゃない・・・。



「美香、何か用か?」



宮原くんが半ば面倒くさそうにそう言った。



「え・・・?」



「用があるから、ここまで来たんだろ?
 この間から俺に何の用だよ」



美香はそんな宮原くんを
頬を膨らませてにらみつけた。



「別に、何も用がなくたっていいじゃない。
 それより-」



そこまでいうと、美香は宮原くんに微笑んで、
それからまた口を開いた。



「先生が探してたよ?わかんないけど・・」



「は?マジで?」


「行った方がいいと思うけど。なんか急用みたいだし」


宮原くんはあたしのほうを不安そうに見つめると、
一度美香を見てから、頷いた。


「すぐ戻るから、待ってろよ!?」



宮原くんはそういうと、屋上を出て行った。




今のって・・・・







「私に言ったのよ?」








『え・・・?』





美香の淡々とした声が
屋上いっぱいに冷たく響いた。