「おう。五十嵐」



『おは・・・よう』



あたしたちはぎこちない朝を迎えた。
宮原くんはあの後、ずっとあたしの傍にいてくれた。


今まで、寂しく過ごしてきた夜は
昨日は姿をあらわさなかった。


だって、宮原くんがあたしを抱きしめてくれたから。



「今日さ、俺が休んでたりした分の補習あんだよ。
 だからさ-」



気になる事が一つだけあった。



“好きだ”



そう言ってくれた昨夜は、
あたしのことを名前で呼んでくれた宮原くん。



宮原くんが名前で女の子を呼ぶことなんてなくて、
あたしが知る限りでは美香だけだったのに、


あたしのこと、“真奈美”って呼んでくれた。


嬉しかったけど、あれからは普通に“五十嵐”に
戻ってしまったみたいで・・・。




「どした?何ふくれてんだよ?」



『え?ふくれてなんかな・・・』



「ふーん。まぁいいや。っつうわけで、
 今日は昼、来れねぇんだわ」



『え・・・。うん、わかった』



何これ・・・。

普通に今までどおり過ぎる・・・。



昨日の“好きだ”っていう言葉は
あたしの夢だったりして・・・っ!?




そう思ってほっぺをつねる。


『いったーっ・・・!!』



「おい、何してんだよ?かせ」



痛かった。思いっきし痛かった・・・っ!!


あたしが大声を出すと、宮原くんは
あたしに駆け寄ってきてほっぺを触った。



「大丈夫かよ。変なやつ。自分でつねるとかさー」



『あ、ありがとう・・・』




彼の触れたところが熱くなる。
これは、死んだ人でも感じるんだって
そう思った。



「よし。腫れてねぇな。んじゃ、俺いくわ」



『あ、うん。頑張ってね』



宮原くんはあたしに向かって微笑んだ。


その笑顔さえも、愛しくて・・・。



あたしは静かに手を振った。