『み、宮原く・・・』




あたしが言い終えないうちに、
視界が暗くなった。



あれ・・・?
どうして?



何が起こってるの?



風の音が強く聞こえる。
そして、トク・・・っと、
心臓のなる音がした。


あたしの・・・じゃない。


彼の、鼓動が・・・。



「やべぇ・・・。超泣きそう・・・」



『え・・・?』



「それって、やきもちってやつだよな?
 美香に嫉妬したんだよな?」



『え・・・っ!?そ、そんなこと-』




「なぁ、このまま聞いて?」




『え・・・?』












「俺、五十嵐が好きだ」









え・・・?



「俺らが、初めて喋る前から、
 入学したときからずっと・・・」



“入学したときから”




あたしは知らなかった。


入学当初なんて、不安ばかりで
周りなんて見えてなかった。


そんなときから、宮原くんは


こんな何の取り得もない、普通のあたしを
見ていてくれたっていうこと・・・?




『なん・・・で・・・』




「俺は、お前のピアノに救われたから・・。
 だから・・・」




『宮原くん・・・』



「宮原っつぅな。涼介って、言えよ」



『え・・・・?』



「好きだ。ずっと言おうと思ってた。
 好きだよ。真奈美」








“好きだよ。真奈美”





宮原くんの低い声が、
いつもより低くて、耳をくすぐった。



いつもより、近い距離。
すぐそばで、彼の声が聞こえる。



急に涙が出た。
安心して、涙が溢れてきた。



だから、あたしも言ったよ?
必死に、言葉を選んで。ゆっくりと。



『ありがとう・・・あたしも、あたしも・・・』




“あたしも大好き”って。




あたしがそこまで言うと、
宮原くんはあたしの涙を拭って
愛しそうに笑った。