たんぽぽ


美香のはしゃぐ声と、
気だるそうな足音が遠くなる。


あたしは音楽室を出て屋上に向かった。



校門の傍に、二人の姿を見つける。



なんだろう。この感覚。



(いいなぁ。ああいうの・・・。それに-)


それに・・・。


(あたしも、名前で呼べればなぁ・・・)



ふと思ったことにびっくりして
あたしは口をおさえる。



何それ。
なんなのあたし・・・。



“名前で”って、誰の?



『涼介・・・くん??』



そっと呟く自分の声が、
風によってかき消される。



聞こえなくてよかった。



知られなくてよかった。



だって、
こんなのあたし・・・。




『嫉妬・・・じゃん』




自分で呟いたのを後悔するように、
あたしは深いため息をついた。




美香は宮原くんの幼馴染。



敵うわけないじゃん。



美香は女の子っぽくて、小さくて、
宮原くんの視界に入っていた時間が
すごく長い。



そして、なにより・・・。



『生きてるし・・・ね』



卑屈になる自分が嫌になる。



こんなことしたって、
あたしが生き返るわけでもないのに。