「美香、悪いけど俺、送ってやれねぇんだわ」


『宮原くん、いいよ!!送ってあげて』


美香は残念そうに頬を膨らませた。


宮原くんがあたしと美香を交互に見つめて、
顔をしかめた。


「涼介・・・。最近、涼介変だよ?
 前はこういうとき、必ず送ってくれてたじゃん」


そうなんだ・・・。
うん。宮原くんなら、送りそう。


だって、すごく誠実なひとだもん。



あたしは静かに微笑んで、
宮原くんの手をとった。



「五十嵐・・・?」



『今日の練習はもうおしまい。
 さ、行って?』



あたしがそういうと、
宮原くんは一度俯いてから、


大きくため息をついた。



「しょうがねぇなぁ。
 ほら、行くぞ。美香」



「やったぁ。さっすが!!
 自慢の幼馴染だね♪」



“行くぞ”



そんな彼の優しく低い声が、
あたしの耳の奥で響く。



おかしいな。
その言葉は美香に向けられたものなのに、




何故かあたしはドキドキした。