「あたしの・・・証・・・?」



『そう。あたしが死んじゃったことはもう変えられない。
 だから、奈々に出来ることは一つだよ』



あたしは奈々の顔に触れて、
奈々の瞳を覗き込んだ。



まだ、見えてるかな。あたしのこと。
あたしの声は、聞こえてるのかな・・・。



『苦しいっていう気持ち、忘れないで。
 苦しんで、苦しんで、苦しみ続けて。
 生きることをやめないで。
 そうしてくれれば、あたしは充分だよ』




「真奈美・・・っこれ!!」




似合う。


奈々には、この絆創膏がよく似合う。



あたしは奈々の顔を見て静かに笑った。


いつの日か、二人で話したあの絆創膏。



―今度傷作ってきても貼ってやんないから―


―うそうそ。ごめんってば、真奈美ー




真奈美―。





体に、違和感を感じる。
あ・・・。
そろそろかもしれない・・・。



わかってしまった。
もうすぐで、奈々にはあたしが見えなくなる。

もうすぐで、奈々にはあたしの声が聞こえなくなる。



一度見えるようになると、なんだか悲しいなぁ。


折角、


折角・・・。



『折角・・・、仲直り・・・できるのに・・・っ!!』




「真奈美・・・?」



奈々も気付いたみたい。
あたしが段々、見えなくなっていくのに。



『奈々、精一杯生きて。
 あたしのぶんまで、頑張って。
 ピアノ、嫌いにならないでね』



「真奈美・・・っ!!まって、あたしまだ、真奈美にっ!!」



『奈々、勇気を出して話してくれてありがとう』



「真奈美っ!!」



『美祐のこと、よろしくね』



「待って!!」



『奈々と、また友達に戻れて嬉しかった。
 ありがとう。ごめんね。奈々』



あたしが、奈々の目にうつらなくなると、
奈々はあたしを探すためにキョロキョロと
辺りを見回した。



「真奈美・・・?・・・っ真奈美!?」




『ここだよ。奈々・・・』



そう言ってみても、返事はない。


奈々は不安そうに顔をゆがめた。



「真奈美・・・」



探すのをやめた奈々はしばらくたちつくして、
その後、勢いよく座り込んだ。



「真奈美・・・っごめん・・・。
 ごめんね・・・真奈美・・・。ごめんなさいっ!!」






“ごめん。
 ごめんね。真奈美”



その声を聞くのが辛かった。



だからあたしは、そんなふうに泣き崩れる
奈々を残して、そっと、音楽室を出たの。





奈々、その絆創膏、あげるね。


あたしと奈々が、いつまでも友達だよって、


そういうしるしだから・・・。