奈々が持っていた写真、


あたしはもうとっくに、
捨てられたかと思ってた。


だけど、信じていいのかな?


捨てられなかったっていうことは、
もしかしたら心のどこかで、奈々は



悪いと思ってくれてるってこと・・・。




『奈々・・・?』



奈々を後ろから呼んでみた。
聞こえるわけないか・・・。


そう思ったとき、突然、奈々が振り返った。


「真奈美・・・?」



『え・・・・・・』



「・・・・・・なわけないよね。
 だって、真奈美は・・・」



そういって俯く奈々。

びっくりした。


一瞬、やっと奈々にも見えたのかなって思っちゃった。


奈々は振り返ったときに、ふと、
ピアノを目に留めて立ち上がった。


埃を被ったピアノを撫でる。


「あの頃は・・・楽しかったのになぁ・・・」



あの頃・・・。


まだ、なんのしがらみもなく、
ただただ、ピアノが大好きで、
お互い精進しあってた頃のこと・・・。



奈々はいつから、楽しくないって思っちゃったのかな。



「コンクールなんて・・・でなきゃよかった・・・」




小さい声で、奈々がそう呟いた。