たんぽぽ


『奈々・・・どうしてあたしの名前を・・・』



信じられない。
奈々が、あたしの名前を呼ぶなんて・・。



いつだったか、美祐と茜くんがあたしの話題を
出したときは怒ってたのに。



奈々の手元をよく見ると、
そこには1枚の写真が握られていた。



奈々と、美祐と、あたしの3人で撮った、
出会った頃の記念写真・・・。



どうして奈々がこれを?



「・・・・・・あたしが悪いの?」




『え・・・・・・?』




誰にともなく呟いた奈々の声は、
コンクールの日と同じような、か弱い声だった。



「あたし、何か間違った?」



『・・・・・・』




「あたしは、ただ・・・。
 あんたが羨ましかっただけなのに・・・」




え・・・?



あたしが羨ましい?


なんで?



奈々・・・。



「どうして、真奈美だけ?
 どうして、あたしはダメなの?
 どうして、美祐も茜も、真奈美なの?
 どうして、宮原くんまで・・・」




奈々の声は震えてた。


そっか。


奈々はずっと、その小さな“どうして”を
誰にも相談出来ずにいたんだね。




今まで、誰にも・・・。