あたしが大声でそう言ったときだった。


ガタっと、物音が聞こえた。


『え・・・?』


ここは旧校舎。
みんなが怖がるからと言って、誰も使わなくなった
音楽室のはずなのに、物音ははっきりと聞こえた。


『宮原くん・・・?』



彼しかいないと思って呼びかけてみる。
だけど、返事はない。


誰?もしかして、別な人?


あたしは恐る恐る音のするほうへ歩いた。


って、別にあたしが怖がるものなんて
ないと思うんだけどね。

むしろ、あたしが怖がられそうな・・・。



『え・・・・・・』




その光景を見て、あたしは言葉を失った。



茶髪のショートカットをふわふわさせた女の子が
そこにいたから。



『奈々・・・・・・』




寺嶋奈々。



最近は、宮原くんのことですっかり記憶から
消えていた人物。



あたしは奈々をじっと見つめた。
もしかしたら、奈々にも見えてしまうかもしれない。
そう思って。



奈々は、音楽準備室のほうにいた。


何してるんだろう。こんなところで。
音楽室はもう新しい別棟にあるはずなのに・・・。



「真奈美・・・」





『え・・・・・・』



突然、名前を呼ばれてあたしはびっくりして立ち尽くした。