たんぽぽ


風が、あたしの体を揺らす。
また、この感じ・・・。


あたしはもうすぐで・・・。


『宮原くん・・・。自分で、自分のこと傷つけないで?
 だから、もうあんなことしないで・・・』


「五十嵐・・」



『あたしはなんて言われてもいい。宮原くんが何か言われたら
 あたしが怒るから!!だから・・・』


宮原くんの顔を覗き込むと、目を逸らして
唇を噛んでいた。



『我慢しよう・・。あんな人達のために、宮原くんが
 傷付くことない。この手は、宮原くんの手は喧嘩を
 するための手じゃないよ・・・』


あたしが言うと、彼は自分の傷付いた手を見つめた。


『宮原くんの手は、まっすぐ前に押し進んでいくための、
 力強い手だよ』


「五十嵐・・・。なんで・・・」




『宮原くんには、“未来”があるじゃん・・・』



あたしにはもう、未来はない。
だけどこの人には、期待がいっぱいの未来がある。



だから、あたしのせいで立ち止まらないで・・・。



『ごめんね。あたしが無理にクラスに行けなんていったから・・。
 宮原くんに、一人になってほしくなかったからつい・・・』



「ありがとな。五十嵐。だけどさ、お前がいてくれんじゃん?」


ダメだよ・・。宮原くん・・。
あたしはもうすぐできっと・・・。



『そう・・だね』



「だけど、俺、もうちょい頑張るわ」


『え・・?』



「俺、あのクラスに馴染めるように
 頑張ってみるわ」


そう言ってにっと笑ってみせる彼の笑顔は、
今までにないほど輝いていた。



『そっか・・・。頑張ろう・・・!!』



その笑顔につられて、あたしも自然と笑っていた。



あたし、この人でよかったって、今思うよ。


あたしを見つけてくれたのが、
宮原くんでよかったなって思うの。


本当だよ?ねぇ・・・。




あたしが宮原くんの手を握りしめると、
宮原くんもその手を強く握り返してくれた。



ねぇ、宮原くん。
あたし、

“あたし”っていう存在を
必死に消さないでくれてありがとう。