「五十嵐・・・?」



宮原くんの手・・・。いっぱい傷付いてる。



さっきまでは、一緒にピアノを弾いていた、
綺麗な手だったのに。



こんなふうになるまで、彼は何を背負って、
何を思って、あたしのために喧嘩をしたんだろう。


『あたしの・・・。あたしの代わりに、
 怒ってくれてありがとう・・・』


「・・・・・・」



『だけど、あたしなんかのために怪我しないで・・・?』



「え・・・」



『これ以上、一人で苦しまないで・・・。宮原くん・・』



いつの日か、あげた絆創膏を傷口に貼っていく。
痛々しい傷は、それによって姿を消していく。



そうだよ。


ついた傷は隠せばいい。
そうしていけば、いつかはきっと治るんだから。


小さな傷を、大きくする必要はない。


包んで、隠して、
なかったことにすればいいんだよ。


だから、宮原くんについたレッテルだってきっと・・・。



『宮原くんは不良なんかじゃない。
 迷惑でもないし、邪魔なんかじゃ絶対ない』



「五十嵐・・・いいって・・・」



『よくないよっ!!』



あたしは叫んだ。一瞬だけ、静寂があたし達を包む。


あたしはそのプールの水面を覗き込んだ。


あたしは・・・。