『いた…!!』



宮原くんを見つけたのは、意外な場所だった。


『どうして、こんなところに…』


そこは、思い出したくない場所、
あたしが死んだ、大きなプールだった。



汚くなったプールの水面を見つめるように、
宮原くんは、プールサイドにじっと座り込んでいた。




「俺さぁ…、ダメだよなぁ…」



『えっ…?』



「お前とさ、約束したのに…」


約束…。


宮原くんは、ポツリ、ポツリと話し始めた。



「あいつがさ、俺が授業なんて受けるもんだから、
 茶化してきてさ、それは別に無視すりゃよかった。
 だけどさ、あいつ…」



ぐっと、拳を握って、水面を思い切りにらみつけた。


「あいつ…っ俺が音楽室の前にいること知ってて、
 “死んで当然の女に手なんてあわせて、バカじゃねぇの?”
 って、そう言いやがった…」


『宮原くん…』



いつか、奈々も言ってた。
“死んで当然”って…。


あたしって、周りから見てそんなやつだったの?


そっか、だからだね。


宮原くんは、“あたしのため”に、怒ったんだね。



そうでしょ?



「ふざけんなよ…。何が当然だよ…。
 五十嵐は、死んでねぇ。ここにいるじゃんかよ」



『宮原くん…。あたしは―』



「俺、おかしいか?いつも思ってた。
 話せるし、見えるし、触れるのに…。
 誰の中にも残らないなんて…ってさ」



「ダメだ。やっぱダメだな。
 俺さ、やっぱおかしいんだよ…」



『え…?』