たんぽぽ


『ねぇ、宮原くん……。
 やめよう?もう…』



「……んでねぇよ……」



「は?」



『え…?』




よく、聞き取れなかったけど、
なんて言ったのか、あたしにはわかった。




「…五十嵐は……死んでねぇんだよ……」




どうしたの?宮原くん。


あたしはもう、死んじゃってるよ?
だから、ほかの人には見えてないじゃない。


それなのに、どうしてそんなこと言ったの?
あたしは、弁解してあげられないから、
宮原くんが、みんなに変に思われちゃうよ…。



『宮原くん、やめよう。違うっていって。
 間違えたって言って?』



「は?お前、頭だいじょーぶ?
 もう随分前のことじゃん」



『ほら、宮原くん。ね?』



“そうだよな”って、そう言って?
“何いってんだろ”って、言って?



今なら間に合うから、
“五十嵐は死んでるんだ”って、そう言ってよ。



あたしの、あたしなんかのせいで―


『傷付かないで…』



「謝れよ…。こいつに。さっき言ったこと全部
 訂正して謝れよ…。なぁ」



「宮原、ほんと頭おかしいんじゃねぇの?」



途端に、周りがざわつき始めた。
みんなが、宮原くんを否定する。


みんなが、宮原くんを好奇な目で見る。


みんなが、宮原くんを認めてくれない。


みんなには、“不良”の宮原涼介でしかないんだ。



『宮原くんっ!!』



宮原くんは拳を握りしめると、
何も言わずに、ゆっくりと教室を出た。


背中に、いくつもの罵声を受け止めながら、
静かに、ゆっくりと歩いていった。