「大体、周りの目を気にしてるならさっさとそこら辺のご令嬢と婚約でもしてるさ」

周りが、あああの人なら仕方ない、と思うような人と

「らしくないね」

耳をくすぐるのは、しるふの少し高めの笑い声

「だろう。ここまで来て折れるのも悔しいしな」

何より彼女たちと肩を並べている自分など想像したくはない

「あ、ねえ、海斗。さっき言ってた黒崎病院を離れないのは、私のためじゃなく海斗のためってどういこと」

「…しるふ、お前、本当覚えとけよ」

これだから困る

こんな風に懐柔させられていい訳はないのに

「悔しいことに、一番いるはずのなかったあそこが、一番居心地が良かったって言うだけ」

海斗を医院長の息子と知りながら、けれど決して特別扱いしない

認めているのは、彼の腕

「それ、医局長の前で言ってあげなよ」

喜ぶよ

海斗の言葉に嬉しそうにゆっくりと微笑む

「必要ないだろ。引き抜きの話全部断ってここにいるんだから」

それがすべての答えだ

「海斗さ、変わったね」

さらに笑みを深くしたしるふに

「誰かさんのおかげでな」

返した言葉は、最高の褒め言葉