もう一度

「でもさー、…」

もぞもぞと机に腕を組んで、その上に頬を乗せたしるふから寝息が聞こえ始めるのは、

数十秒後のこと

「あー」

やっぱり、飲ませ過ぎたか

テーブルの空いているところに置かれた空のジョッキ

それとしるふを交互に眺めながら、ふと息をつく

「…あ、もしもし、黒崎先生ですか。お疲れ様です」

取り出した携帯で呼び出すのは、最近姫君専用お迎えタクシーとの位置づけがある黒崎海斗

「えー、ものすごく申し上げにくいんですが、黒崎先生の姫君がですね、私の前で爆睡し始めまして」

お迎えに来ていただけないかと

電話口で海斗がああ!?とうなっている

濁点が付いていたかもしれない

「いや、本当に申し訳ないです。調子に乗って飲ませすぎました」

「…場所は」

ため息交じりの声音

「えー、こないだERで飲み会をした居酒屋の向かいの蔵屋敷ってとこです」

目の前の彼女の肩は規則正しく上下している

「わかった。20分で行けると思う」

そう言って切れた電話