「ああ、あれね。ちょうど俺の代」

「え、じゃあれってもしかして」

「俺と俺の相方」

ええ!!嘘!!初耳!!

驚いて見上げてくるしるふに、いいから、バット握る、と容赦なく言い放つ

「右手上、もうちょい上持つ」

てきぱきとした指導にはい、はい、と素直に従う

「足、肩幅」

で、腰落として構えて

言葉はぶっきらぼうなのに、触れる手は優しい

「友達がすごい騒いでましたよ、あの頃」

背中に感じるかすかな温もりから意識を外そうと話題を戻す

「そう」

興味のなさそうにつぶやいた声を最後に温もりは離れてしまって

代わりにゲームが始まる合図がする

「思い切って振って。そのうち当たるから」

なんていう適当なアドバイスが背後から聞こえる

流れる沈黙とバットを振る音

「ねえ、海斗」

今日初めて下の名前で呼ばれた、なんて野暮なことは今は言わない