「尚子?誰だっけー?」


「さぁ?忘れちゃった〜」


「黒川先輩みたいに存在感あれば忘れないのにねー?存在感無いもんねー」


「確かにぃ!ウケる〜!」




チラッとそっちを見ると

俯いて座ったまま
そいつらの会話をじっと聞いている女がいる



たぶんあいつが尚子って奴だろう

泣いているのか
机にポタポタと染みを作っている



女ってやつは入学して2ヶ月で
もうそんなくだらないことをしてんのか



だいたい

本当に存在感無いなら
名前さえ出てこないだろ

名前出てる時点で忘れてねーじゃん


それに黒川美桜と比べるなら
自分達だって人の事言えねーだろ


しかもウケるとか言いながら

顔は真顔じゃん





とか心の中ではツッコミつつも


面倒事に関わりたくない俺は


そいつらの横を素通りして自分の席についた



つい

機嫌が悪くなるとやってしまう
貧乏揺すりの癖が出る



嫌な予感しかしねー





「…はぁ」

とため息をひとつ溢した