「…………そうだ、」



どうして思い出せなかったのか、思い出した。雨芭はほぼ独り言のように語りだす。



「神隠しは俺の記憶を改ざんし、気がつけば、俺は現実(こっち)にいて……。雪芭の兄として、こっちに始めから存在、していたんだ」



怖いくらい綺麗な笑顔を浮かべて、あの神隠しは楽しそうに言った。






「ヒトの世がおかしくなろうが、壊れようが、どうでもいいもの。緋葉を神隠し(わたし)の供物にしようとするヒト、みーんな壊しちゃった。ヒトは嫌い、でも、あの女が一番嫌い」






緋夢の村で最後に見たのは――――






真っ白な着物に鮮やかな牡丹が咲き乱れた、血で汚れた着物を纏う少女だった。