瞳の向こうへ

暑いのに彩佳をなだめながら教室に向かうという面倒なことが続きますね。

「おはよう」

この人も不機嫌モード丸出しだよ。

「俺らが来た時からこれですよ」

青柳君が心なしか涙目になっているようにみえた。

ですよね。めちゃくちゃ貧乏ゆすりしてますもんね。

「どうしたの?」

唯が不機嫌になるのを見てきた経験があまりないからなあ。彩佳以上に神経使うよ。

「聞いて!バイクにひかれそうになった」

なんと!仲間がいました。

自分の席にカバンを置いた彩佳が血相をかえて教壇にあがった。

「あたしも!」

「黒のバイク!」

「そう!」

「もしかして、謝らずにそのまま?」

「うわ〜、仲間です!!」

これは一体何の握手なんだろうか?

私も青柳君もたった今来た尚太君が揃って口をポカーンと開いちゃってる。