瞳の向こうへ

一球目はキャプテンが立ち上がって球をやっと取った。

ダメだ……。どうしてあんな球投げるんだ……。

キャッチャーミットが小さく見える。

二球目はワンバウンド。

ストライクが入らねえ。

マウンドに汗がポツポツしたたり落ちる。

……ここまでか……。

先輩たちには申し訳ないです。

こんな形で終わらせるんですから。

所詮、俺は……。

キャプテンが小走りでマウンドへ。

今さらなんですか?

マウンドに来たキャプテンは正面を指差した。

ん?

言われるがまま真っ直ぐ正面を見据えた。

……これは……。

俺が今まで気づかなかったのか?

いや、そんなことは……。

麦わら帽子をかぶって観戦してる加奈子の存在に今気づくとは。

キャプテンは何も言わず戻っていく。

加奈子……。お前……。

『大切な人からへのメッセージです。前を見て!光を掴んで!』

加奈子は手話でそう俺に伝えて祈り始めた。

俺はキャプテンのサインを確認した。

サインと同時に手話が。

『前を見ろ!俺のミットめがけて投げてこい!迷うな!振り向くな!』