瞳の向こうへ

普段とは違う葵ちゃんが強烈に目に焼き付いて二人とも心ここにあらず。

「翔君はまだ部屋に閉じこもってるんだって」

「そうですか」

「明日の試合は……」

「明日の試合も翔でいきますよ」

青柳君の真っ直ぐで力強い目力が私の言葉を飲み込ませた。

「青柳君、監督が決めることよ」

「監督に土下座してでも準決は翔でいきます」

「どうして……」

青柳君はコップの水を勢いよく飲んで伏し目がちに。

「葵から聞いてると思うんですが、葵と翔が手話で喧嘩してるとこ見てました」

青柳君の告白にコップを持ってた手が止まった。

「二階から見てたんで遠くから見てましたけど、少なくとも翔にはつらい過去があるんだとわかりました」

店員さんが水の補充をしに席に来たので二人ともコップを差し出した。

青柳君は補充された水をまた一気に飲んだ。