瞳の向こうへ

『お騒がせして申し訳ないです』

お母さんが神妙な面持ちで頭をさげた。

「いいえ。私たちは大丈夫ですので、顔をあげてください」

お父さんは、お母さんの肩に手をそっと添えて名前を呼んだ。

顔をあげたお母さんは疲労の色が濃かった。

「廉君の容体は」

「たった今手術が終わって今からICUへ。予想以上に頭の損傷がひどくて一時心臓が止まったようで。それを聞いた葵が少し取り乱しまして……。命は助かりましたが、意識が戻る確率は半々なようで。若さに期待するほかないようです」

お父さんに気丈に説明していただいたけど、話していくうちに沈痛な面持ちになっていくのを見て今さら聞くのを後悔するなんて。