瞳の向こうへ

デイルームで青柳君と雑誌を読みながら過ごしていたら、看護師さんが家族待機部屋に入っていくのがわかった。

「いい報告だといいけど」

青柳君がぽつりと呟いた。

私もそうだと信じていまーー

泣き叫ぶ声が廊下中に響いた。

落ち着きなさいとお父さんが葵ちゃんをなだめてる声も聞こえた。

どっちなんだろう。

いずれにしても青柳君の希望は今のところ薄そう。

看護師さんが出ていくのと入れ替わりに私と青柳君は看護師さんに会釈して部屋に入った。

葵ちゃんは……まだ顔を埋めたまま。

「さがらーー」

葵ちゃんを元気づけようと青柳君なりの心遣いかもしれないけど、私は青柳君を制した。

青柳君は私と、両親、葵ちゃんをぐるっと見渡して肩を落として部屋から出ていった。