瞳の向こうへ

青柳君はここに残ることになった。

宿舎で夕食は摂らず、出来るだけここにとどまりたいと。

私はまだご両親に挨拶してないので家族待機部屋にお邪魔した。

十畳ほどのスペースにテレビと布団や枕が備え付けられてる。

淡いブルーの遮光カーテンが時おり風でわずかだけど揺れてる。

葵ちゃんはというと、壁にもたれかかって体育座りで顔を埋めていた。

そんな葵ちゃんを横目にお父さんにまずはご挨拶。

「葵さんの部活の顧問をしております川崎と申します」

「娘が大変お世話になって。ありがとうございます」

物腰の柔らかいお父さんです。

「妻です」

お母さんは深くお辞儀をした。

「申し訳ないんですが、妻とのコミュニケーションは基本手話なんです。ご無礼をお許しください」