瞳の向こうへ

新幹線での移動中は葵ちゃんは落ち着きを取り戻していた。

でも、ほとんどうつむいていてスマホを握ったままだった。

握っている両手は震えていた。

現地に到着するまでは一人にしてられない。

にも関わらず現地の情報屋から電話がくるんだよねえ。

一旦電話を切りメールした。

「状況は?」

『病院は加奈子ちゃんと一緒のとこ。手術はさっき始まった』

これも何かの運命なのか偶然なのか。

葵ちゃんにはそのことは伝えなかった。

いや、伝えようにも伝えられないと言ったらいいかな。

ささいな言葉で取り乱してしまう危険があるので、私はただ葵ちゃんの隣ですわっていることだけに専念した。