瞳の向こうへ

今の確信が持てない状況では、葵ちゃんに事故が起きたってことは伏せておくべき。

関係ないところでいらぬ雑音を入れる必要はない。

「どうしたんですか先生。顔色悪いですよ」

いまはまだ知らせるべきではない。

「先生?」

「え?ううん。なんでもーー」

「川崎先生!おお!相良さんもいたか」

「校長先生……」

息をきらしながら部屋に入ってきた。

……待ってよ。

冗談って言ってくださいよ。

「大変なことが起きた。野球部の泊まってるホテルに車が突っ込んで、……その……」

校長先生は私に言ってるんじゃない。

いきなり押し掛けて何のことか状況を把握しきれてない葵ちゃんに向かって説明してる。

「あなたの弟の廉君が巻き込まれて今病院に」