瞳の向こうへ

それは見たくもない光景だった。

俺は……またこういう状況を作ってしまった……。

キャプテンが仰向けになって横たわる廉に向けて必死に呼び掛けてる。

頭部から血が流れ、左足が複雑に曲がってる。

当然意識はなく反応はない。

軽自動車に乗っていたと見られる女性は車から降りてその場に座り込んでしまった。放心状態でとても今話せる状態ではない。

外は何事かと人が集まり始めていた。

監督は混乱する若いフロントスタッフを身振り手振り交え何やら指示を飛ばしていた。

そして……俺たちは……。

廉の口元から血が流れ出した。

『翔!!落ち着け!廉は助かる』

キャプテンは廉の様子を見ながらパニック状態の俺を励ます。

自分の持ってたタオルを廉の後頭部にあてて何とか血を止めようとしてた。

俺は……、何も変わらないんだ。

友達でさえ……先輩に守ってくれとお願いされたのにも関わらず……。

『翔!!いいか?今お前は一人じゃないんだぞ。俺たちがついてんだ。大丈夫。廉は死なない』

キャプテンの高速手話は今俺の心には響かない。

今響いてるのは過去の忌まわしい記憶が無限に響いてた。