瞳の向こうへ

これは辛いなあ。

両親まで巻き込んだらぐちゃぐちゃになっちゃうよ。

「翔君は相当なショックだったと思うけど、なぜかモテ続けたんだって」

「それは誰から聞いたんですか?」

「松井さん。本人に聞けるわけないでしょ?周辺の取材とかで聞いた情報だと思うけど」

アイスコーヒーに入れてあった氷が溶けそう。

「入れるよ」

潤子先生は振り向いて冷凍庫の扉を開けて氷を出した。

私がグラスを持つと、素早く氷を入れてくれた。

「で、中学になって年下の子と付き合ったけど、実はその子クラスでいじめを受けてた」

「翔君は知ってたんですか?」

「知らない。みんな手話出来なかったから。彼女は彼に迷惑をかけたくない一心で彼の前では笑顔を絶やさなかった」