瞳の向こうへ

「そんなびっくりすること?よくあることよ」

さらりと言ってしまう潤子先生にまたまた驚く。

私がおかしいのか?

小学校から彼氏持ちじゃなかったからなあ。そんな気持ちがよくわからないよ。

「ある時、彼女と一緒にデートした帰り、信号無視した車が突っ込んで来たの。彼が気づいたのは、彼女に突き飛ばされた瞬間だった。彼をかばった彼女はその日のうちに亡くなった」

潤子先生は自分用のアイスコーヒをテキパキと作ってテーブルに置いた。

一口口に含み喉を潤した。

「彼には直接の影響はなかったけど、両親同士がいがみあったみたい。耳さえ聴こえていれば娘は死なずにすんだっていう言い分に翔君の両親が凄く怒って感情的になったらしいの。向こうは仕事の関係で全国どこでもすぐ引っ越すような家庭だったから、目の前から対立する相手がいなくなったからある程度は問題解消したけど」