瞳の向こうへ

「知りたい?」

「もちろん」

こうなった以上は翔君を根こそぎ知ろうじゃないの。

潤子先生は私の覚悟を受けとめてくれだようで、深呼吸を一度して話し始めた。

「翔君の耳が聴こえなくなったのは二歳ぐらいの時からだった」

「そんな前から」

「それでも、健常者と変わらない生活を過ごしたよ。もちろん手話も小学校入る前から始めてたけどね」

気持ちがちょっとグラっと揺れたよ。

待て待て。こんなエピソードで心揺れる単純な女ではございませんので。

少しばかりの動揺をアイスコーヒで抑えよう。

「彼が小五の時に初めて彼女が出来た」

「小五!」

目が回りそうだった。

私の感覚では早い部類だよ。