瞳の向こうへ

さすがに室内と外では勝手が違うか……。

誰もが口にはしないが、そう思ってることを察してか、加奈子ちゃんは首を横に振った。

「止めないでください!私は大丈夫です!バランス崩しただけです」

両手を広げて微調整し、足の震えもなくなった。

「今から大丈夫です」

言葉通り引きずり気味だけど自力で歩けてる。

潤子先生は……メイク少し落ちてますよ。

見守ってた看護師さんや途中駆けつけてきた加奈子ちゃんの主治医の先生も笑顔で拍手。

みんな瞳か潤んでましたよ。

タクシーに乗る直前に杖を渡され病院を出発。

潤子先生は車内でお化粧直し。

私と加奈子ちゃんは見てみぬふりを決め込んだ。