瞳の向こうへ

看護師さんに車椅子を押してもらって玄関前まで来た。

病院前には連絡したタクシーがすでに停まっていた。

「いける?」

看護師さんもさすがに不安そうだったけど、加奈子ちゃんは看護師さんに満面の笑顔での返事だった。

私と潤子先生はもうハラハラドキドキでその瞬間を待つ。

少し歯をくいしばって、ゆっくりと腰を上げる。

自分の状態を確かめながら、ゆっくり。確実に。

「おお〜」

感激で言葉が出ない。

隣の絶不調な先生は早くも涙腺が崩壊しかけてます。

立ち上がった加奈子ちゃんは深呼吸を一度して足元を見つめた。

つま先からずっと少し離れている私たちへ視線を合わせていく。

そして、前へ……。

少し足が震えた。

加奈子ちゃんの顔がしかめっ面に。

両手を開いてバランスをとろうとしてる。