瞳の向こうへ

一番奥の部屋に案内されました。

名札が一つしかない。

中に入ると、ベッドが一つ。

テレビの横に寄せ書きが飾られてるだけの少し殺風景な個室。

あやまるなら今のうちだよ。

この二人だけの空間がチャンスよ。

これを逃したらもうチャンスは巡ってこない。

勇気を出せ!

殻を破れ!

「…………あのーー」

示し合わせたように二人揃って声が出た。

「どうぞ、お先に」

「いや、先生からどうぞ」

互いに譲ってみたもののこの調子。

もう、どうにでもなりなさい!

「加奈子ちゃん、ごめんなさい!私を一生憎んでも構わない。あなたのために頑張ったけど、何も出来なかった。本当にごめんなさい」

彼女に頭を下げたのは意識がなくなる直前以来。

どれだけ謝っても足りないです。