瞳の向こうへ

「加奈子、誰だかわかるか?」

もうドキドキが止まりません。

胸を押さえてこのドキドキを止めたいです。

どんどん私に近づいてくる。

うわ〜。怖い〜!

「先生、こんにちは。痩せました?」

変わってないよ。

変わってなくて怖いくらい。

ロングだった髪からセミロングにはなってるけど、何もかも変わってない。

「元気だった?」

「それを言われると微妙ですけど、最近は悪くないですよ」

「そう……だよね」

「ねえ、先生と病室で二人だけで話したいからいい?」

密室で二人だけ……。

こてんぱんに打ちのめされます。

当然両親は首を縦にふりました。看護師さんも同じく。

私の重い足取りと彼女の車椅子のスピードが丁度いいくらい重なりました。