瞳の向こうへ

すでにお相手のご両親がお待ちになっておりました。

「先生、ご無沙汰しております」

両親に深々と頭を下げられて久しぶりに緊張で足が震えていた。

「こちらこそご無沙汰しております。なかなか足を運べる機会がなく申し訳ございません」

病院内の消毒の匂いが全く感じないほど私の身体は緊張に溢れております。

「加奈子さんは今リハビリ中だとお聞きしているんですが」

「おかげさまでだいぶ歩行機能も回復して、退院に向けて来月何度か外泊する予定です」

「そうですか……」

「先生もお変わりなくて」

ご両親の言葉がその都度私の胸に突き刺さってきます。

逃げ出したい。

早く終わらせて帰って葵ちゃんと騒ぎたい。