再び杖が風を切り、私のお腹の上に当てられた。
その瞬間、身体中に痛みが走り思わず声をあげる。

手で自分の体を抱え込み痛みに耐えようとしてみるものの、目を開いても真っ白でぼやけてしまい益々パニックに陥る。


「凄い拒絶反応だな」


ガブリエルが興味深そうに呟き、ミカエルはため息をついた。


「人間を天使にするなんて、荒技だからな。副作用も大きいだろう。」


ミカエルはサラの額にそっと冷たい手を置き、何事かを囁いた。
するとサラはストンと眠りにつき、その体をミカエルが抱きかかえる。


「起きても苦しんでいたらラファエルを呼べよ?今のうちに交流を深めておいた方がいいだろう。」


ミカエルはガブリエルの言葉に何も応えず、そのまま宮殿の奥へ消えていった。


「何考えてるんだか…。自分が苦しくなるだけなのに」


それでもミカエルは、"それ"を選ぶのだ。

天使も意外に世俗的だな、というガブリエルの言葉は白い壁に溶けていった。