「えっ?」


「もう後には戻れないぞ?」


そう言ってガブリエルが宙に手をかざせば、白くて複雑な形をした杖が出て来た。


「待って下さい…!な…何をするのですか?」


「お前を今から天使にするのだ。さぁ横たわれ」


美麗な天使に促され、自然と体を横たえる自分。
相当位の高い天使なのだろう。その体が滲ませる覇気に従わずにはいられない。


「本来、天使とは男であるもの。女人を天界に招き入れるとは…時代の流れとは恐ろしい…」


ガブリエルがぶつぶつと呟くのを聞きながら、目を閉じる。
背中が冷たい白石に当たり、心地良い。


「これより御身を神に捧げる儀式を始める。心を落ち着かせ、邪念は追い払え。」


御身と言いつつ言葉の端々に荒さを残すガブリエルに、心の中で苦笑いしながら頭を真っ白にする。