「この世界に存在するマテリアルは全て神のお与えになったもの。それを守るのは、他ならぬ我々天使の役目なのです。」


「でも、いきなり天使になれって言われても、何が何だか…」


一緒に地上を見下ろしていたタミエルが、私に目をやり頭をぽんぽんと叩く。
その動作は、初めて会ったことを忘れさせる程優しくて滑らかだった。


「何が心配ですか?それともこの世界でまだ生きていたいのですか?」


「当たり前でしょ?私まだ17歳だし…やりたいことも沢山ある…」


「それでも、貴方は天界に必要な存在なのです」


ゆっくりと言いながら、私の掌に自分の手を合わせる天使。
そこから光が放たれるのを見て、不安を露わに天使に目をやる。


『大丈夫です。僕が、傍にいます。』


光に照らされた天使は、儚い微笑みを浮かべ私に呟いた。








───彼の手が穢れを知らないと、私は最初から傲慢にも思い込んでいた。
彼の心の中に蔓延る黒い感情を私が飲み込んであげることが出来たら、彼は救われただろうか──…