天ノ月

「こら、何してるんですか。待ってろって言ったのに」


「……ひゃっ!なに!?あ、書類!あった?あったの?」


「……ひとまず落ち着いてくれます?」


急いで手を引っ込めた私は、書類を手にしたタミエルと向き合う。

彼は私がこの場にいることにため息を吐いただけで、特に指弾する気もないようだ。


「書類はありましたよ。ミカエル様が不在なので勝手に取るのは気が引けますが…。置き手紙をしておけば大丈夫でしょう。」


「ふーん。……ねぇ、ミカエル様も飲み物飲むんだね?」


「あぁ、これですか?何も食べたり飲んだりしないのはつまらないのでお遊び程度に召し上がっているのでしょう。紅茶をたいそう気に入ってましたし…」


そこではたと何かに気付いた素振りを見せるタミエル。

首を傾げてみせれば。


「…変態。さっきカップに手を伸ばしていましたね?ミカエル様に言い付けなくては」


「煩い!この前ねぇ、ミカエル様にからかわれたんだから!タミエルが告げ口したんでしょ」


タミエルはポーカーフェイスを崩さず、だが視線を逸らした。


「何のことだか」


「………もういい」


大きく息を吐きそして吸い込む。
肺の中に、心地よい空気が満たされていった。