天ノ月

「…なにその態度。俺らのが天界にいた時間は長いことをお忘れなく、"大天使さま"」


天使の手が私の首へ添えられる。
流石に恐怖を覚えられずにはいられなかった。

先ほどから神経を尖らせているのに、タミエルやアザゼルの気配は感じられない。


「私の首を締め上げることに意味があると思うの?」


全ての雑念を追い払い、天使の目を無表情で見つめる。

私が狼狽えないことが予想外だったらしく、天使は目を少し見開いていた。


「さぁ、知らない。でもお前の存在が俺たちには不快なんだよ」


首に回された手に力が込められる。
もう駄目か、と思った瞬間、眩むような明るい光が私から放たれた。

正確に言えば、私の手首から。


(あ…タミエルがくれたやつ…)


手首で綺麗なブレスレットが輝いていた。

天使はと言うと地面に尻餅をつき、麻痺したように動けないでいる。


「…今後このような無礼は許しません」


震える足に力を込め、踵を返し直ぐにその場から立ち去った。