天ノ月

「もっと本気で射れと言っているでしょう」


「無理よ。今のが全力だもん」


タミエルに矢を消す暇を与えないくらい、大きな聖力を込めて矢のスピードを速くしなければならない。
原理は理解出来ても、いざやってみると難しいのだ。


「それに万が一タミエルに当たったらいやだもの」


「まず当たることはないでしょうし、当たっても構いませんから全力で射てください。ほらもう一回!」


彼が自負している通り、タミエルは相当なスパルタ精神を持ち合わせている。

その日もヘトヘトになるまで弓の練習をすると、暗くなったから、と言ってようやく解放してくれた。


「あれ、サリゃ、にゃにひてりゅお」


神殿前にたどり着くと、口をもごもごさせるアザゼルと出会った。
はっきり言って相手をする程元気ではない。


「アザゼル、悪いけ……んっ…!?」


口に何かを押し込まれ、喉を詰まらせながらそれを嚥下する。


「美味いでしょ」


「うん、これ何?」


「木の実ー!サラ疲れてそうだから差し入れ、な!」


ニカっと笑う姿は無邪気で何も言い返せない。