汗ばんだ肌が気持ち悪くて、私は近くの小川まで歩いていくとパシャパシャと顔を洗った。
濡れた顔のまま振り向くと、タミエルと目が合う。


「なに?」


「いや、…」


言い淀む姿に違和感。
いつもシャキッと偉そうで、それなのに敬語で話す姿に見慣れているからだろうと納得。


「もう少し」


「んー?」


「少しだけでもいいから凛々しく振る舞えないのですか?貴方は仮にも大天使になる者だというのに…。少し不安です」


残念そうな瞳を向けられる。彼の本音なのだろう、きまりが悪そうに岩に座り直している。


「タミエルはさぁ、大天使を恭しく扱いすぎだよね」


「は?…貴方は大天使を何だとお考えですか。敬って当然です」


「そうだろけどさぁ。確かに力とか圧倒的な差があるかもしれないけど、私は…もっと天使一般に優しい大天使になりたいな」


笑ってみせる。
元々人間だった私に凛々しさなんて求めても仕方ないんだから。
それなら。


「戦いで天使と人間を守るのも素敵だけど、もっと彼らに愛情を注いであげるべきだよね。」


言い切った瞬間、先程とは打って変わってタミエルは優しく微笑んだ。