「うん。分かってるよ。でも不安だし寂しい…」


ため息混じりに呟くと、手を強く握られる。

タミエルの横顔は相変わらず怜悧で、無表情のように見えるけど。


「寂しいのなら貴方の傍にいてあげます。アザゼルだって喜んで貴方の話し相手になるでしょう」


ちらりとタミエルがアザゼルに一瞥をくれる。
アザゼルは陽気に口笛を吹いたりなんかして、私たちの後ろを歩いている。


「大丈夫、貴方は立派な大天使になれますよ」


「そうかな?」


「貴方は自分が思っている以上に強い。…だからこそ、選ばれた…のでしょうね」


タミエルの表情が曇る。
何か私に言えない事情があるのだろう。私も深くは追求しなかった。


「さぁ、僕は用事があるのでこれで。僕がいなくても先程の部屋まで戻れますよね?」


神殿の入口でタミエルは私に額ずいた。


「うん。じゃあ後でね、タミエル」


「サラ!じゃあまたな」


横からアザゼルがひょこっと割って入ってくる。

私の名を呼び捨てにしたことにタミエルは少し苛立ったようにアザゼルを睨む。


「じゃあね、2人共」


こうして私の天使としての初日は幕を閉じたのだった。


そして過ぎること一週間…。