天ノ月

「それは……」


口ごもったタミエルの顔は、大きな陰を落とし眉を寄せていた。


「ある方が、強くお望みになったからです。貴方が適任だと」


「それって…」


「これ以上は秘密です。ね?」


顔を近づけ、唇に指をあてられる。
美麗すぎる顔に嫌でも心臓が大きな音を立ててしまい、頬が赤くなるのが自分でも分かった。


「わ…分かったから!」


そう言ってグイッとタミエルを押しのける。


「その顔でそれはズルいよ。」


正直に言えばクスクスと笑い始めるタミエル。
優しくて、爽やかな風が私たちの間を吹き抜ける。

白い部屋は光を集め、汚れも何もないように見えた。

だから、なのか。
人間であった自分が不純物であるように思えて穢かった。

目を瞑って大きく深呼吸し、頭を真っ白にして再びタミエルを見据える。
彼は全てを察しているかの様に微笑んだまま私を見ていた。