緊迫した時間だけが過ぎて行き、あっと言う間に深夜になった。さすがに疲れのせいか眠たくなってはきたが、おっちゃんは眠る気など更々無いように見えた。

「ねえ、おっちゃん。警察じゃ駄目なの?」

「警察じゃ駄目だ。無駄に死人を出すだけで返り討ちにあってしまう」 

 またお互いに無口な時間に入り、いよいよ僕は本格的な睡魔との戦いになってきた。  

「あ、もしかしたら」

 僕はおっちゃんの声に目が覚めた。 

「どうしたの?」

「チャペルの車だよ」

「チャペルの車って、あれは爆撃されて無くなったんじゃ?」

「いや、多分、別の車を用意したはずだ。作戦会議はあの場所に決まっている。防衛軍に関わっていた車がやられたんだから、公の報道とは違った水面下で動いているはずだ。指揮管は総理。総理の出入りは人目を触れにくいあの駐車場からだ。よし、今から行って見張るぞ。立て、くそガキ」