「おっちゃん、ホントにここで間違い無いんだよな?」 

 
「ああ、多分な」 

 多分なって言われても、ここは結婚式場。それも小さなチャペルだぜ。防衛軍がこんな場所にある訳無いじゃないか。 

 その気持ちを察したのか、おっちゃんはこう言った。 

「俺がまだお前と同じような仕事をしている時の話だが、何故だか理由は説明されなかったが当時の首相が会社の見学に来たことがあった。俺は普通に仕事をしていたが、俺のパソコンを勝手に立ち上げ、所長がなにやら訳の分からない説明をしていたんだ。まっ、だからって、それが何だって感じで俺は受けとめていたんだが、それから数日後、首相が乗った車がこのチャペルに入っていくのを偶然に目撃した。 
 勿論、窓はスモークで中が見えるようにはなっていないが、正面から見た時、運転手の肩口からチラッと顔が覗いた瞬間を俺の目が逃さなかった。それが首相に間違いなかったんだよ」