玄関のガラスで出来た観音開きのドアを閉めると、ギギ―っという嫌な音が建物内に響き、コウモリでも飛び出すのかとヒヤヒヤもんの心境となって辺りを見回した。幸いにも、動く気配のある生物は現れず、僕は安堵した拍子に抱えていた両足を落としてしまった。 

「ごめん」

 僕は慌てて謝ったが、それは謝罪する必要の無い身体であることを再認識すると、涙目でおっちゃんの顔を見た。 

「泣くんじゃない」

 おっちゃんは、僕を一喝すると、取り敢えず二階に上がるぞという指示を出し、顎をしゃくって合図した。

 二階の廊下に彼女の身体を静かに置くと、そのすぐ隣に僕とおっちゃんは腰を下ろした。 

「さすがに疲れたな」

 そう、疲れたよ・・・・

「この人、訳が解らないことを言って僕を殺そうとしたし」

「そうだな。完全に死にかけたよなあ」


 何だかムッとする言い方に聞こえたが、反論する元気など今の僕には残っていない。そう言えば。 

「おっちゃん、どうしてここに居たの?それに、どうして助けてくれたの?」