「皮肉?それとも嫌味のつもり?」

「いや、真実を言ったまでだけど」

「だってあれは癖だから仕方がないじゃないの。意思に逆らって勝手に手が動くんだから。私だって本当は嫌で嫌で堪らなかったのよ」

 彼女が興奮してきたのは明らかだった。

 しかし、癖とは何なのか。 

 僕はあらゆる出来事を反芻するように何度も行き来してみた。その結果、一つの事件に辿り着いたのだ。
 
 あれは確か、学校がある街の隣の街で万引きが流行した時のことである。最初は安いアクセサリー類に限定されていたが、そのうちに腕時計とか指輪、イヤリング等の結構値が張るものが店から無くなっていった。これはもう万引きではなく盗難事件であった。 

 今ではセキュリティを高める為に複数の防犯カメラを設置するのが当たり前なのではあるが、当時は店内に一つという店が多く、そして、そんな店が標的となっていたのである。