僕は、学生時代の事を必死に思い出そうとして、脳ミソのページを過去に向けて何枚も何枚も捲った。

 だけど、やっぱりそれ相応の事が浮かぶことは無く、返す言葉も見つからずに途方に暮れてしまった。 
 しかし、その心配は彼女のほうから打ち消してくれた。

「あの事なんですね、やっぱり。あの事で私を脅して何かをさせるか、お金を揺するつもりなんでしょう?貴方って、そいいう人ですもの」

 何を勘違いしてるのか。その開き直ったような言い方には強い嫌悪感が現れている。

 それにしても、あの事とは何だ。強迫されるような何かを彼女がやっていたという事なんだろうか。いや、多分そうだ。だから、それを恐れて攻撃的な口調になったのだろう。

 僕は、それが何か分からないまま、何だか面白い事になったと思い、彼女の話の流れに乗ることにした。 

「それにしても凄かったよね」

 僕は、話の腰を折らないような言葉を選んで投げ掛けてみた。